メルキアデス・エストラーダの3度の埋葬

デキサス、米墨国境の田舎町。

若夫婦がシンシナチから引っ越してくる。夫は国境警備隊に雇われたマイク(バリー・ペッパー)、妻はルー・アン(ジャニュアリー・ジョーンズ)。

マイクはある日、誤ってメキシコ人のメルキアデス(フリオ・セサール・セディージョ)を射殺してしまう。

しかしマイクは名乗り出ない。メルキアデスの親友ピート(トミー・リー・ジョーンズ)は犯人がマイクであることを突き止め、彼を拉致。メルキアデスが生前頼んでいた

「もし俺が死んだら、故郷のヒメネスという村に埋葬してくれ」

の約束を履行するため、マイクに手錠をかけ馬に乗せ、死体ともども国境を越える。

前半がマイク夫婦、ピート&メルキアデスが並立。そこにマイクの妻ルーと、カフェを営むレイチェルらが絡む形。

後半がピートとマイクの、ロードムービー

サスペンスもアクションもない。マイク拉致の場面で若干の暴力はあるが、映画は淡々と進む。

だが、すごく心に残る。

マイクは若く勢いがあり、不法入国するメキシコ人に差別感情すら抱いている。不法に越境する者なら女性でも殴る。これが良い伏線となっている。妻ルーとの関係にも、この伏線が効いている。

これが、ピートに強要され国境を越えメキシコは”ヒメネス”に向かう旅を経て、昇華される。ラストシーンで観るものにカタルシスを与える。

とはいえ、まったく声高に主張してはいない。ただただ情景を、事態を映すだけ。だから、心に残る。

本作は05年、ピート役のトミー・リー・ジョーンズの初監督作品。カンヌで主演男優賞(トミー・リー)と脚本賞を獲った。

製作には彼はもとよりリュック・ベッソン(『グラン・ブルー』『レオン』ほか)が名を連ね、バンドことザ・バンドレヴォン・ヘルムも出演。

◆メインテーマ

米墨国境はコーマック・マッカーシー作品で自分には馴染み深い。乾いている。すなはちウェットではないが、すごくもの思わされる舞台である。

こと「3度の埋葬」に従って進む結構が特徴的な、これは浄化の物語。トミー・リー・ジョーンズの、詩的な魂。

メルキアデス・エストラーダの3度の埋葬 − 予告編